RPスピーカー

昔フォステクスにRPスピーカーというのがあった。
内容はうろ覚えだが、ダイナミック型にかかわらずプリントコイルの平面振動版で、プレナー型の様な動きをする。
プレナー型と言うのは長くオーディオを続けている私にはあこがれのひとつで、クオード・マグネパン・アポジー・スタックスなど一度は使ってみたいと思っていた。
特にアポジーは、そのしゃくれる一歩手前の様な音が、非常にセクシーに聴こえたものである。
今でもアポジーの「シンティラ」や「デュエッタ」は機会があれば使ってみたいスピーカーである。
(置場所・懐具合・それと使いこなしの能力で不可能だが、、、)

プレナー型のスピーカーは、一番難しいのは低域である。
案外と言うか、予想通りと言うか、ダイナミックな低域が出にくい。
そこで、様々なメーカーがコーン型のウーハーと組み合わせようと試みるのだが、これがうまくいっているのを聴いた事がない。
シャラシャラする中高域にボンボンいう低域ということになる。


フォステクスのRPスピーカーには、ツイーター・ミッドレンジなど様々な種類があったように思うのだが、かなり高額でとても買うことが出来なかった。
ミッドレンジなど、軽く数万円はしたと思う。

ところが先日、友人がこのミッドレンジのデッドストックを手に入れたという。
またこの友人が、RPのツイーターも持っていて、システムを組んで欲しいという依頼が来た。
さて困ったのが低域である。
並みのウーハーではとてもスピード感が合わない。
昔と違い今ならユニウエーブ(デッドマス抱き合わせ)と言う手があるが、それにしても30センチクラスの強力なウーハーが必要だ。
考えあぐねていると、この友人が以前に私が組んだフォステクスのエッジレスウーハー(20センチ)2発の100リットルのウーハーが余っているという。
渡りに船とばかり、このウーハーにRPミッドレンジ・RPツイーターを組み合わせることにした。
ちなみにエッジレスウーハーと言うのは、その名の通りエッジの無いスピーカーで、フレームとコーン紙の間に何も無く、隙間が開いている。
コーン紙はダンパーのみで支えるという非常に凝ったユニットである。
今でも私はこのウーハーは大変優れていると思っているが、もう20年以上前に製造中止になっている。
一時期パイオニアから同じようなウーハーが出ていたが、こちらのほうは使ったことがない。

このエッジレスウーハーは、第一に低域が出にくい。
かなりスピード感があるから、聴感上レンジが低く聴こえるだけでなく、ある程度容積も必要だ。
第二に、割と中域にかけて音圧が高くなる気がする。
少し暴れもあるので、あまり高い帯域までは使いたくない。
まあ難しいユニットだが、何とかなるだろう。
100リットルの2発入りなら調度良い。


さて、中域のエンクロージャーをどうするか?
少し音出ししてみると、結構後ろ側へも音が出ている。
密閉型にもしたくなかったので、そのまま衝立だけとするかどうするか悩んだが、上面に開口がある三角形のエンクロージャーとした。



仕上げは例によって布張りである。



ネットワークは、素子の関係もあり、中域のローカットは1100Hzの12db/oct、ウーハーのハイカットは700Hzの6db/octとした。
スタガーだが、ウーハーの特性を考えれば、このくらいでもおかしくないと思う。(というのは表向きの理由で、たまたま素子がこれしかなかったのである)
高域のローカットは1マイクロのコンデンサー一発である。

多分、この組み合わせで最低限の素子数だと思うが、それでもかなり高級品を使っているので、一から買えば軽く片チャンネル1万円は超えていると思う。
この辺がマルチウエイの難しいところで、今回は初めからそこそこの繋がりだったのでそのまま使ったが、素子を買い直したりしていると、かなり良い金額になる。
また中域のレベルが高かったかったので、デールの10wで3デシくらい落としたが、抵抗の金額もそうだが、デールは東京の海神無線でしか売っていない。
雑誌には、「セメント抵抗で値を決めてから、高級素子を買え」などと書いてあるが、素子が変われば同じ値でも音圧が違って聴こえるのである。



出来上がってみると、かなり重量が軽かったので、御影石が底板に貼り付けてある。
また、中域のエンクロージャーは3点支持としている。
このあたりも試行錯誤で、ウーハーのエンクロージャーの上に乗せているので、かなり影響を受ける。




さて出て来た音は、、、、まずは大成功である。
RPの中域の音は、どちらかと言うとダイナミック型に近い。
また、全く古さを感じさせない、逆にいえば当時としては珍しいくらい「まとも」な音である。
ドーム型のような繊細さがある。
振動版の固有の音はほとんど感じない。

低域は、もう一度吸音材から補強まで再調整したが、スピード感のある切れの良い音である。
RPに決して負けていない。

メインスピーカーと比べると、音像が大きい、ダイナミックレンジが少し狭い等負けている部分もあるが、こちらの方が市販高級スピーカーの音に近く、評価する人も多いと思う。
嫌な音を極力出してこない良いスピーカーである。

それから、色々試しているうちに非常に面白いことに気付いたのだが、中域の裏板を外したままで聴くと、音像がふっと緩み、昔聴いたプレーナー型のような雰囲気が出てくる。
多分、後からの回り込みの音が、この独特の雰囲気を作っていると思う。
昔は良く解らなかったので、「大面積の良さ」とか「振動版の軽い良さ」と思っていたが、この回り込みを聴いていたのかもしれない。


しかし、デカい。
200リットルのメーンスピーカーの前にこれを置くと、いかにもデカい。

「いや、お前の態度よりはまし」などとは言わせない。