12センチバックロードホーン


バックロードホーン、ああ何という甘美な響き。
30年以上オーディオをやっているものにとって、バックロードホーンには独特の感慨がある。
古くはJBLのハークネスから、ビクターやコーラルのバックロードホーン、長岡さんのダイナロードシリーズ。
特に長岡さんのダイナロードシリーズは、使った人も使ってない人も、その独特の外観、市販には絶対出ない音から、ある種の憧れはあったと思う。

私も長岡さんのファンだった。
バックロードも何作か作った。
しかし、私の耳には、それがどうしても紙臭く、荒っぽく聴こえた。
決してそれは私のメインシステムになることはなかった。
かけがえのない友人たち、サークルの仲間、大勢がバックロードホーンを使っていた。
もしあの時私がバックロードホーンを使っていたら、、、彼女に好きだと言っていたら、、、私の人生は変わっていたか、、、。

長岡ファンでありながらバックロード嫌いというねじれ現象、、、、
嫌いなものは嫌いと言い、人と違った方法で結果を出そうとする生き方、、、それは決して平坦ではなかった。

そんな想いもあって、何十年ぶりにCWホーン(幅が一定のバックロードホーン、長岡さんのD−3やD−7、D−55、ハークネスなど、ちなみにスワンやオートグラフなどはCWホーンではない)を作ってみた。
あの時の私の選択は正しかったのか、、、、

ユニットは手持ちの中の最強と思われるFE126E、設計は長岡さんの12センチ用を拝借し、磁気回路が強力なので幅を少し広めにとった。

板は15ミリ合板、今は日曜大工店があるのでホーンの部分の板はきっちり同じ幅にカットしてもらった。
考えたら、昔は台付きの電気鋸で自分でカットしていたから、さぞ空気漏れがあったに違いない。





ロードの中のデッドスペースには園芸用の小石が詰まっている。


                                     


開口部分の斜めの板の後にも園芸用の小石が入っている。





底面の安定が良いように、底板だけは少し大きめの20ミリパーチクルボードを使った。
私らしく、バッフルは交換式とし、サブバッフルは布張り、ユニットとすぐ後の板の間は支えの合板が入っている。





さて、何十年ぶりに再会した彼女は良い声で囁いてくれるだろうか、、、、。

出て来た音は、思った以上に鳴きは少ない。
多分、重量増加やユニットを中付けにしたこと、磁気回路を支えていること、バッフルの反射が少ないことが効いていると思う。
ハイ上がりのはずのFE126Eが非常にバランス良く鳴っている。
確かに市販のブックシェルフスピーカーに比べ、伸び伸び鳴っているし、音が立ってくる。
昔のFEに比べ、紙臭さも少ない。

しかし、、、しかし、、、今回も私は彼女に好きだとは言えなかった。
バスレフをバスレフ臭い音と言うなら、バックロード臭い音と言って良いのか、、、、、
その立ってくる音が、私には少しでしゃばっているように聴こえてしまうのだ。

もう、生きている間に彼女に三度目の再会をすることはあるまい。
もし、最初に会った時に「好きだ」と言っていたら、、、

自分の感情に素直なこと、、、、、それは自分の感情に素直でないことよりも、素敵だと見られるかもしれない。
でもそれは、多くの大切なものをなくすことにもなった。



PS.とてもスピーカーの制作文章には思えんなあ〜   ただの死にかけのジジイの妄想に思えるが、、、、、