フリップフロップさんのスピーカー

フリップフロップさんのスピーカーは今の私のスピーカーのルーツとも言えるスピーカーである。

フォステクスのFEシリーズが新しくEシリーズになり、これは使えると思った。
その一番の要因は、音が紙臭くなくなったことである。
しかし相変わらず低域はそれほど出ないから、これにスーパーウーハーを追加することを考えた。
一番最初に作ったのは、83E2本をシリーズ接続しウーハーにFW160のダブルバスレフを組み合わせたものだった。
これが予想以上にうまくいったので、83E1本にFW127を加えたもの、同じく83E1本に10センチウーハーでバーチカルにしたものなどを制作していた。
このような一連のスピーカーを制作して判ったことは、フルレンジは意外と能率の高いこと、逆にウーハーは150Hz以下になると思った以上に能率が低いことである。
目安として3〜5dbくらいウーハーの能率が高いくらいがちょうど良いように思う。

そこで満を持して制作したのがこのFW200と83E3本シリーズの組み合わせである。
実験としては83E4本のシリパラや2本のパラもやってみたが、前者は能率の点で、後者はパワーの点でうまくいかなかった。
それと83Eにはコンデンサーを入れたくなかったので、中域のインピーダンスが高いのはある意味ありがたい。
83Eのローカットについてもさんざん実験してみたが、コンデンサーは色付けが大きいし、フイルムなら良いだろうと50マイクロくらいのオーディオ用のフイルムも使ってみたが、ランニングに時間がかかりすぎ感心しなかった。
返ってブラックゲート(電解)の方が使い易かったりしたが、いずれにしてもコンデンサーを入れるとかなり情報量が落ちるのでフルレンジのメリットがなくなる気がした。
FW200のハイカットは仕方がないので8ミリとか10ミリのコイルを使っている。

このスピーカーのもうひとつの大きな特徴は、中域に逆ホーンを使っていることで、コニカルホーンの一回折り返しで、天板にスリット状の開口がある。
これをさんざん苦労して、フェルトや真綿で吸音している。
実はこの時まで何年も逆ホーンに凝っていた。
スパイラルホーンの逆バージョンやL字型のホーンなど何台作ったか自分でも覚えてないくらいである。
特にウーハーボックスの上に載せるL字型の逆ホーンは数台作ったが、開口が真上に伸びているため見掛けは悪いワ安定は悪いワ、何度も倒れてきて大騒ぎをした。
そしてこれが私の逆ホーンの最終作になった。
吸音材でこれくらい苦労するなら、ボックスの後板にドリルでいくつも穴を開け、吸音材で処理した方が良いのではないかと思ったのである。
まあこの方法も後でさんざん苦労することになるのだが、いずれにしてもこの後逆ホーンは作っていない。
そういえば、私が逆ホーンに取り組んでいたかなり後になってから「ラジオ技術」で逆ホーンを見かけたが、人間の発想と言うのは似たりよったりだなあと感心したことがあった。

それからFW200はもうかなり経年変化が進んでいて、エッジがヘタっていた。
ウレタンエッジは大音量を入れると数年でヘタってくる。
仕方ないので自分でセーム皮に張り替えてある。
フォステクスのウーハーはマグネットが大きくて気に入っているのだが、ウレタンエッジだけは何とかして欲しい。

その他の点については、私の定石とおり、ウーハーは御影石で支え、吸音材は低域は主にフェルト、フルレンジは主に真綿である。
仕上げはビロードをブチルで張り込んだ。
この仕上げがフリップフロップさんには大変気に入って頂いたようで、他にない雰囲気がお店にあっているらしい。

さて音であるが、非常に優しい音のするスピーカーである。
余分な音は一切出ないが、もともとが83Eなので、押し出しよりも分解能に優れている。
ここで、気付いたのだが、トーンゾイレもユニットが多くなれば多くなるほど、中域がにじんでくる。
これは後にFE83E6本までいった時にもっとはっきりするのだが、この独特のにじみが好き嫌いの分かれるところである。