フルレンジミッドレンジ     

私のメインシステムは、ミッドレンジにフォステクスFE-168EΣを使っている。
私は、若い頃からフォステクス・コーラル・パイオニア・ダイヤトーンなどの国産から、JBLなどのホーンスピーカー、そのあとヨーロッパ製ユニット、ディナウディオやスキャンスピーク、セアス、フォーカル(JMラボ)なども限りなく使ってきたが、最終最後はフォステクスのそれもフルレンジである。
それは、フォステクスのフルレンジがかなり進化して使うに値する音質になったということもあるが、それ以上に中域にクロスが来るネットワークの悪さ、、、、これに尽きる。
違う音色のスピーカーを無理やりつなぐ不自然さに加え、ネットワークで明らかに情報量や立ち上がり立下りが落ちる、、、これに耐え切れない。

そこで、フルレンジを使ったスピーカーを他にも色々作って判ったことは、「ミッドレンジに使えるフルレンジはほとんどない」ということであった。
今のFE-168EΣも、あえて欠点を挙げれば、僅かに音色が明るいことである。
ハードでシャープでダイナミックだが、音がどんどん前に出てきて、奥行き感はあるものの、音に奥ゆかしさがない。
もっともこれはないものねだりの世界で、根暗なスピーカーからは逆に叩きつけるような音は出ない。
他のFEシリーズ、例えば83Eや127Eもそこそこだが、パワーが入らない。
20センチの208EΣは使ってみたい気もするが、それに合うウーハーが見当たらない。
そんなこんなで、店で聴いたり友人に聴かせてもらったり、ミッドレンジに使える音の良いフルレンジを探していた。


その中で、かろうじて使えそうなものとして、TBの930SGがある。
これはマルチバスレフに入れた時はかなり良い感じであった。
930SGは10センチだから、それほど大きな音は出ないが、10センチにしてはかなり耐入力がある。
聴感上の能率も高そうだ。
ただ、箱に一定の響きのあるマルチバスレフより、ミッドレンジに使うのは、さらに厳しい。
ミッドレンジが10センチだから、今回は大型スピーカーではなく、ミドルクラスのスピーカーを作ってみた。


さて、これに合わせるウーファーをどうするか?
中域が10センチだから20センチ強位でよい。
色々考えているうちに、以前市販のメ−カー製のスピーカーのウーファーを色々テストしていた時に、シャープの28センチだけ手元に残しておいたのを思い出した。
市販のスピーカーのウーファーは、今だから言うが、ほとんど使い物にならなかった。
O社のカーボン入りのもの、T社のリブの入ったもの、Y社のもの、、、どれもダイキャストフレームでかなりしっかりしているが、いかんせんマグネットが小さい。
そのうえ、紙に色々な素材を混ぜ込んでコーン紙が重い。
おまけに能率が低い。
80年代のスピーカーのユニットは、見かけは一流だが音は重くどんよりして、お話にならない。
かろうじてパイオニアやコーラルなどユニットを単売しているメーカーのものは、やはり一味違っていた。
その中でシャープの物は比較的マグネットが大きく、コーン紙も樹脂で軽そうだったので、手放さずに手元に置いておいた。



エッジは例によってボロボロだったので、セーム革に張り替えた。
口径は27〜28センチくらいだ。
少し大きいが、まあ低域が出すぎているのは何とでもなる。


今回のスピーカーはウーファー部とミッドレンジ部を分離せず一体型とした。
ツイーターは、とりあえず手元にあったオンキョーを利用した。
ウーファー部は50リットル強のバスレフとした。
高さは板取りの関係で90センチ、その上にツイターが乗る。



私のスピーカーだから、例によってウーファーのマグネットは御影石で支え、フルレンジのマグネットは角材で支えている。
本体は茶色の塗装、バッフルは布張りである。
ウーファーにはコイルが1ケ、ツイーターにはコンデンサーが1ケのみである。


さて音出し、、、、、これが久々と言ってよいくらいとんでもない音だった。
ミッドレンジはフルレンジなので予定通り、ツイーターが有り合わせなのでグレードが低いのはともかくとして、ウーファーが最悪だった。
能率も低いが、150Hz以下で使っているにもかかわらず、コーン紙の樹脂の音がする。
それがかなり耳に付く。


そこで、またまた裏技を思い付いた。
とりあえず音圧を上げよう。
目を付けたのが、ウーファーのキャンセルマグネットだ。
AV用ではないので、キャンセルマグネットは必要ないだろう。
キャンセルマグネットはメインのマグネットの磁力を相殺するため、逆相でボンドで貼り付けてある。
このボンドをシンナーで溶かし、マグネットを外す。
そして正相で再び貼り付ける。
イメージとしては、フォステクスのスーパーのユニットである。
ユニットをバッフルにネジ止めし、気を取り直して再び試聴する。
予想としては能率が上がり、ユニットの余計な動きも抑えられるはずだった、、、、、、が、これがさらに事態を悪化させた。
もう樹脂の音が聴こえるレベルではなく、音がポンポコリンで使い物にならない。
ユニットというものは、素人が単純に磁力を強くしてもどうにもならないことを思い知った。
実は、こういった類の失敗は今までかなりしている。
オーディオはやってみないと解らないものだ。
あまりひどかったので、勢い余ってウーファーを外し、そのまま大型ゴミに出してしまった。
残ったのは穴の開いたバッフル板である、、、、、、さてどうしよう。



仕方なく、何気なく手持ちのユニットを眺めていると、目に止まったのがフォステクスのおなじみFW200だった。
このユニットは今まで何度使ったか知れない。
オークションで落札してはスピーカーを組み、誰かに持って帰ってもらい、また出物があればオークションで落札し、スピーカーを組み、、、、、もう知り尽くしているといっても良い。
このユニットは非常に使いやすいユニットだ。
Fゼロが低く、マグネットが強力だ。
ただコーン紙もそれなりに重いので、風の様な軽い低音は出てこない。
どちらかというと、がっしりとした低音である。
エンクロージャーは25〜30リットルくらいで充分である。
ところが、今回はエンクロージャーはすでに出来ているので、ここにそのまま入れるとすると、必要な内容積の倍の容積がある。
これでいいのか、、、、、容積を何かで減らすのか、、、、、などと難しく考えないで、もちろんそのまま入れる。
バッフルには既に28センチの穴が開いているのでバッフルを作り直す必要があったが、構わずサブバッフルをつくりそのまま使用した。
なあに、友人が来れば「リニアフェイズ」などと言ってごまかすことにしよう。



さて、気を取り直して再び試聴。
まあ予想した通り軽い低音ではない。
パンチ力はあるものの、重いといえば重い。
ただ、箱の内容積が大きいせいか、思ったほどではない。
能率も合いそうなのでこのまましばらく聴く。


次に気になったのは高域だ。
悪くはないが、たまたま手元にあったあり合せのオンキョーのユニットなので、グレードは高くない。
これは上に乗せているだけなので、お気に入りのデイトンオーディオのドーム型に交換する。
デイトンオーディオは廉価中の廉価だが、細かい音が良く出てくる。
さて、完成。
かなりバランスは良い。


ところが何人か友人がやってきて、聴いてもらうと「そこそこやね」とか「まあまあやね」とかいう。
私の家は、多くの友人が遊びに来て色々意見(言いたい放題)を言ってくれる。
実は私の中ではこれが発奮材料になっている。
「そこそこ」や「まあまあ」では頂けない。
原因は解っている。
フルレンジにこだわり過ぎているのだ。
930SGは中域に使うと、予想した範囲以上に中高域が持ち上がっている。
これが独特の音となり、音楽を一定の方向に引きずってしまう。
何を聴いても、同じようなトーンに聴こえてしまう。
しかし、これは分割振動で中高域を出すフルレンジの限界と言っても良い。
この高域の独特のカラーのない(少ない)フルレンジを探すのは至難の業だ。


さんざん迷ったが、背に腹は代えられない。
泣く泣く5000Hz以上をコイルでカットした。
それに合わせて高域のコンデンサーも増やす。
このことにより、ものすごく音は良くなった。
友人達も、「中高域はものすごく良い」と言ってくれている。
しかし、しかしである。
このスピーカーのコンセプトは、「フルレンジミッドレンジ」でははなかったのか、、、、、
サブバッフルを作り、ウーファーを換え、ツイーターを換え、さんざん手を入れているうちに、、、、ボケのせいで最初のコンセプトなど思い出せん。




.