自作リスニングルーム

自作リスニングルームと言っても決して離れを建てたとか、ログハウスを買ったとか、まして方舟を作ったという話ではない。
私の家は三階建で、もともと一階にガレージが付いていた。
狭い建売住宅である。
しかしながら、車は実家に置きっぱなし、その車もおっつけ処分してしまったので、ガーレージをリスニングルームに改造した。
ただし、他人の手をほとんど借りず、一年がかりでひとりでリスニングルームに仕上げた。
自作リスニングルームである。
もともとのリスニングルームは、妻が来てからわずか5.5畳の部屋にさらに妻の書棚が入り長い間肩身の狭い思いをしてきたから、何とかその状態を脱出したかった。



さて、やるならどんな部屋にするか、、、、、
ガレージは、床はコンクリートの打ちっぱなし、壁は軽量コンクリート、表は電動シャッターである。
部屋にするからには、一応書斎としても使えることを考えたから、方舟のように床のコンクリートの上に直接クロスカーペットを敷き詰めるなんてことは考えなかった。
もちろん、壁も軽量コンクリートむき出しではなく、板張りにしたかった。
さらに、表のシャッターだけでは、閉めたままだと暗いし、第一隙間風で冬は居れたものではない。
どうしよう??

まずは床である。
思案の結果思いついたのは、ツーバイフォーの木材を碁盤の目ように敷き詰め、そこに床を張ると言う方法だった。
問題はツーバイフォーをどうしてコンクリートの床に固定するかである。
ただ置いてあるだけでは、ぐらぐらしてリスニングルームにはなりっこない。
そこで元のガレージの床にコンクリートドリルで穴を開け、エポキシを塗ってボルトを立てたのだが、築後10年もたったコンクリートは硬いの何の、、、
ドリルの刃をお釈迦にしたばかりかドリルまでお釈迦にしながらやっとの思いで穴を開けた。
それでも当初の設計よりはかなり少なくなった。
実はこのとき大失敗するのだが、床が水平になるようにコンクリートとツーバイフォーの間に建築用のワッシャーをかませて調整したのだが、元のコンクリートの床は排水を考えてか思った以上に前に傾いていた。
そうとは知らず、百均で買ったおもちゃのような水準器で適当に調整したものだから、いざ床が張れてみると、少し前に傾いている。
うううううう、、、、まいっか。

次に、ガレージの床にはもともと排水のマンホールと、家庭排水用の枡があった。
もちろん点検口はつけたのだが、マンホールのほうはそういう設計になっているのか、完全に密閉されている。
ところが枡のほうはコンクリートに穴の開いた蓋がしてあるだけだったので、これを石版に隙間テープをはさんで蓋をした。
この隙間テープが甘かった。
しばらくして点検口を開けてみると中が湿気だらけである。
よく観察していると、お風呂の大量のお湯を流したときに湯気が出ているではないか、、、、、
これが湿気の原因だった。
湯気を何とかしようと色々試行錯誤したがうまくいかず、結局最後には石版をシリコンボンドで完全に張り付けてしまった。
水道法違反かなあ〜   よく知らん。

ツーバイフォーの碁盤の目の間には断熱材を入れ、床はパネコートを張った。
パネコートは今となっては少し弱い気もするが、評論家の福田さんもオーディオボードに使っていたくらいだから音は良いはず、、、、と無理やり自分を納得させる。

壁は思ったより簡単だった。
軽量コンクリートに下穴を開けて合板を張ってゆく。
といっても、窓もあるし、段差もあるし、合板も20枚近く張ろうと思うと結構大仕事だった。
また所詮は素人工作なので、合板と合板の間にところどころ隙間が開いているのはご愛嬌。

元のガレージにはまだやっかいなものがあった。
二階からの排水用のパイプが壁に沿って数本ある。
さすがにこれはぶった切るわけにはいかないので、壁の部分を棚にし、カーテンで隠してある。
家に一人でいるときはなんら問題はないが、妻が二階で洗い物をしていると、カーテンの後ろからチャラチャラ水の流れる音がするが、今のところどうしようもない。
慣れてしまえば小川のせせらぎに聞こえる、、、訳はない。


         

一番苦労したのはシャッター側の壁であった。
完全に壁にしてしまえば遮音には良いだろうが、昼間でも部屋が薄暗いのは頂けない。
そこで防音サッシを入れることを考え付いたが、サッシなど日曜大工店にも売ってない。
さすがにこればかりはプロの出番かと思ったが、案ずるより生むが易し、ネット通販でサッシを見付けた。
まさかサッシがネットで買えるとは、、、すごい時代になったものだ。
サッシは思った以上に重かった。
かなり厚い二重ガラスである。
一人で持ち上げるのがやっとだった。
それに比べて、サッシ枠のやわいことやわいこと。
柱に木ネジで止めていくのだが、止め方次第でひずむひずむ。
枠をはめサッシを入れようとすると、ひずみで入らず、また枠を付け直し、またひずみで入らず、また枠を付け直し、、、。
ええ加減にせーと突っ込みを入れたくなる位だった。

せっかくオーディオルームを作るのだから、これだけは何とかしたかったのが、床と電源である。
まず床については、スピーカーの下は特に念入りにツーバイフォーが入れてあるだけでなく、その上に御影石の一枚板が敷いてある。
御影石の一枚板など最低でも数万円はするかと思われたが、なんの、コーナンへ行けば一万円でお釣りがくるのだ。
最初にこれを見つけたときには小躍りするくらいうれしかった。
でも小躍りってどんな踊りか知らないので踊れなかった。
左右のスピーカーが一枚の御影石に乗るのは、メカニカルアース的にも非常に良いと思う。
こんなものがわずか数千円で買えるとは、、、、すごいですね〜

次に電源についてだが、もともと家のブレーカーは子ブレーカーが8ケ付いているタイプで、何年か前に他の部屋にエアコンを増設したのですべて塞がっていた。
そこでネット通販で、子ブレーカーが3ケついたブレーカーボックスを購入し、(何でもネット通販で買うなという突っ込みは無視して、)子ブレーカーからリスニングルームまでエコグリーン(福田さん推薦のFケーブル)で、直接電源を引いた。
電源はエアコン用と、アンプ用と、プレーヤー用3本引いた。
さすがにブレーカー周りの配線は資格を持っている人にお願いしたが、本当はブレーカーからリスニングルームまでの配線も素人がしてはいけない(多分)。

それと電源についてほとんど知られていないことだが、いかに壁にしっかり壁コンを付けるかが非常に重要である。
初めにこのことを友人から聞き、実家の壁コンを見てみると、壁の薄い石膏ボードのようなものを前から壁コンが後ろから金具がやんわりと挟んでいるだけである。
これは今の建売住宅でもほとんど同じだったから、通常はこれでよいのだと思う。
これを壁の穴を広げ穴から木材を入れ、奥の木の部分に木材を木ネジとボンドで付け、ボードを介さず壁コンをがちがちに付けると驚くほど音が変化する。
最初は何か間違っているのかと思うくらい音が変わった。
壁コンを変えた時の変化どころの騒ぎではなかった。
そこで今度のリスニングルームでは、丈夫な板を壁の合板を介してボンドを付けて軽量コンクリートに木ネジでねじ込んだ。
壁コンはこの板に取り付けてあるからピクリともしない。
たぶんこのせいで、かなり音は良くなっていると思う。

床は通販で買ったクロスカーペットを敷きつめた。(だから何でも通販で買うなって、、、)
50センチ四方のクロスカーペットは、ロールカーペットよりよほど張り易い。
端から順番に並べていき、反対側の一枚を張るときに測ってカットするだけである。
数箇所軽く両面テープが張ってあるだけで、ほとんど並べているだけである。

次にエアコンであるが、さすがにこれはプロに頼んだが、室外機までの配管を通す穴を外壁に開けなければならない。
もちろん取り付けのときに工事屋さんが開けてくれるだろうが、金額も高いし何とかこれを事前に自分で開けようと思った。
それまで自分の家の外壁の材質のことなど考えもしなかったが、これも硬いの何の、通販で買ったホールソーでは、一分もしないうちに刃がだめになった。
仕方なくコーナンでダイヤモンドなんとかという一番高い刃を買って何とか開けたが、開けてみると外壁はアルミサイディングだった。
知らんかった、、、、、、

という訳で何とかリスニングルームが出来上がった。
最初にひとりでと言ったが、ブレーカー周りとかエアコンはプロに頼んでいるし、時には遊びに来た友人が手伝ってくれたりもした。
わずか7畳くらいのリスニングルームで、立派な部屋を持っている人の足元にも及ばないが、とにかく「自作」リスニングルームなのだ。
計画から一年以上かかったが、自分の手でやり遂げた充実感は何物にも変えがたい。