ミドルリファレンス                              

現在のリファレンススピーカーは大変気に入っている。
特に中域のFE168EΣはなかなか良い。
音だけで言えば103Eや83Eも捨て難い。127Eも気に入っている。
しかし問題は音量だ。
リファレンスとして使うにはパワーを入れた時にビビッてしまう。
トーンゾイレにすると音像が滲む。
ネットワークで低域を切ると情報量が減る。
もうひとつは能率だ。
FEシリーズは総じて能率が高い。
FE168EΣに対しては、ラムサの99dbのウーハーを、127Eに対してもJBLの38センチを組み合わせたが、いかにも大きい。

そこで、フォステクス以外のフルレンジ探しが始まった。
と言っても、なかなかリファレンスに耐えるフルレンジは少ない。
音量のことを考えると14センチは欲しい。
色々あたっているうちに「麻布オーディオ京都店」さんで面白いユニットを聴かせて頂いた。
SBアコースティックの15センチウーハーである。
特性上は7Kにピークがあるが、軸上の僅かな範囲だけで、フルレンジで聴かせて頂いたところ、「ヨーロップ製のウーハーにしては少し音が明るく感じる」が、ピークはほとんど気にならない。
フルレンジとして使っても7〜8K位までは実用になりそうだ。
そこからはツイーターにつなげば良い。
低域は100Hz以下はウーハをプラスする。
能率も88dbでウーハー探しも楽そうだ。

続いてウーハーであるが、こちらは手持ちのケンウッド(トリオ)のLS−800のウーハーを使うことにした。
オールドファンならご存知だと思うが、コーン紙の前面に何本もリブの入ったごっついウーハーである。
オークションで手に入れた時にとっくにエッジはボロボロだったので、セーム皮に張り替えてある。

ツイーターもヒトヒネリ入れた。
炭山さんが雑誌で使っていたDAYTONのドーム型である。
ネオジウムでありながらなんとペアで3000円以下のツイーターなのだ。
現物が来てみると、おもちゃのように小さいのはともかくとして、バッフルが全くないので(というか事前に写真で解るやろ)、カリンでバッフルを作り接着した。




今回はなるべく大きくしたくなかったので、ウーハーBOXは45リットル位に抑えている。
ユニットの後のオモリには、御影石のレンガ状のものがウーハーBOXとツイーターBOXに各2ケ、左右で合計8ケ入れている。
多分ウーハーのオモリとしては最低限ぎりぎりだと思う。
その分補強はそこそこ入れている。
最近は補強はパーチクルボードを使うことが多い。床材用のかなり硬いものである。
補強はBOXと同じラワン合板を使うと響きが一定になるので、床材の方が良いと思う。





オモリとユニットの間は木とフェルトで調整する。
ここはけっこうノウハウがある。
御影石直接だと音が硬くなるし、薄い板をかませて、さらにフェルトダンプする。
最初はゴムや布・綿・ブラックメタル(制震合金)なども入れてみたが最近はこれに落ち着いている。
ギリギリより少し厚めに入れて、バッフルと本体を建築用のボルトで締め上げる。







中域のBOXも御影石とボルトは同じだが、低域はバスレフなのに対し、中域は後板にドリルでいくつも穴を開けている。
いわゆるマルチポートだが、私はこれを「ザル方式」と呼んでいる。
中域は出来るだけユニットにプレッシャーを掛けず、なおかつなるべくFゼロを殺した方が細やかになるようだ。

高域はとにかくBOXにしているが、中は園芸用の砂利が詰まっている。
まあ、長岡さんの鉛ではないが、上からウエイトで押さえ込むのは悪いことではない。

ネットワークはウーハーにコイルを1ケ(8mH)、ツイーターにコンデンサーを1ケ(0.68μF)のみである。
仕上げは表面にブチルと両面テープで布地を丁寧に張り込んでいる。
見掛け云々より、エンクロージャーからの余分な輻射が抑えられ、かなり音が静かになる。





さていよいよ音出しであるが、ここまで来るまでに数え切れないくらいの失敗をしている。
一番の大失敗は低域のバッウルを割ってしまったこと、、、、、?
バッフルに対してユニットが大きく、ユニットの両サイドは3センチ位しかない。
ボルトを締め上げているうち、パキッと嫌な音がしたと思ったら、見事に折れていた。
仕方がないので、バッフルだけ床用のパーチクルボードで作り直した。

中域のBOXは当初のものは大きすぎてどうしてもデザインが間延びしてしまうのでこれも作り直した。

高域のコンデンサーはありあわせのものを使ったら思った以上に話しにならない。
慌ててゴールデンウイークにもかかわらず、サウンドアテックスさんにメールして後払いで送ってもらった。
いつも無理ばかり言ってご迷惑を掛けているアテックスさんだが、今のところコンデンサーは私の中ではアテックスさんのAudioCapしかない。
しかも高い方の錫箔ではなく、安い方のポリプロピレンが気に入っている。
10年来愛用の逸品である。

そのほかにもツイーターのバッフルを何度も作り直したり、吸音材を調整したり、、、、


さて、さんざん苦労して出て来た音の方だが、中域はあらかじめ「麻布オーディオ京都店」さんで聴かせて頂いているので、まあ少しだけ明るめのヨーロッパトーンである。
細かい音がかなり良く出る。
高域は、値段を考えなくても充分に使えそうだ。
ドームの材質が良いのかネオジウムのせいか、けっこう静かな音のツイーターだ。
あっけないくらいである。
細かさもそこそこいけそうだ。
問題は低域である。
多分クラシックしか聴かない人には丁度良く感じるかもしれないが、ジャズも聴こうと思えば少しスピード感に欠ける。
レンジ的な伸びは結構あるようだ。
聴いて頂いた友人は気を使ってか「90点」をつけてくれたが、まあいいとこ65点位のものである。
リファレンスには少し厳しい。





追伸

このスピーカーの制作にあたり、貴重なアドバイスを頂いた「麻布オーディオ京都店」さん、並びにいつもご迷惑ばかり掛けているサウンドアテックスさんにこの場を借りて謹んでお礼申し上げます。