ミドルリファレンス V

ミドルリファレンスは、非常に面白いスピーカーである。
まず、中域に15センチウーハーをほぼフルレンジで使ってる。
最近改めて自覚したが、良いフルレンジはジャズをかければジャズが鳴り、クラシックをかければクラシックが鳴る。
これは非常に重要なことで、市販のスピーカーは複雑なネットワークと中域にクロスがくることで、いずれかの音楽にチューニングされている。
フルレンジはこのチューニングがないのだ。
出しっぱなし、投げっぱなし、、、
これがいいのだ。
ただし、寺島さんのような「このCDのベースはこう鳴って欲しい、あのCDのシンバルはこう鳴って欲しい」という要望には対応出来ない。
フルレンジを使っている方はよく「低域から高域まで、ひとつのユニットから音が出てくる良さ」と言われる。
多分点音源のこととか、音の統一感のことをを指しておられるとは思うが、私は全然そういう風には考えない。
フルレンジを使うのは、中域にネットワークが入らない良さなのだ。
レンジが狭ければ、スーパーウーハー・スパーツイーターで対応すれば良い。
一番重要な中域が「出しっぱなし、投げっぱなし、」、これが良いのだ。

次に、フルレンジの低域にあまり背圧をかけず、吸音材をうまく利用してだら下がりにしている。
これは、実際体験しないと解らないと思うが、大振幅しているコーン紙から出てくる中域はどうしても独特の癖が乗る。
これがいわゆるドップラー効果なのかどうかは解らないが、エフゼロをうまく殺し、低域をだら下がりにすると非常に中域が澄んでくる。
このことを、私は長い間吸音材を入れたり出したり、その種類もグラスウール・ロックウール・マイクロウール(?)・ウレタン・フェルト・綿その他ハイテク素材も使ったが、何度も何度も入れたり出したりを繰り返している間に偶然発見した。

他にも、中域低域のユニットを御影石で支えていること、高域用の箱の中には園芸用の石が詰まっていること、エンクロージャーにブチルゴムと両面テープで圧手の布地を張り込んでいることなどにより、非常に雑味の少ない鳴きの少ないエンクロージャーになっていることが挙げられる。

最後にSBアコースティクスのウーハーだが、僅かに明るめながら、非常に今風の音色である。
フォステクスのあっけらかんとした明るさはないものの、音色的には市販のスピーカーとよく似ていて、やや抑え目の情報量の多い音である。


さて、目の前のミドルリフェレンスの音を聴きながら、この後どうするかを考える。
まあ、問題はウーハーだ。
オンキョーになってかなりかなり良くなった、というかトリオが酷かった。
オンキョ−も決して悪くはない。
しかし、メインスピーカーのラムサに比べると、、、

再びウーハー探しが始まる。
もうこれ以上部屋の中にウーハーがあるのは精神衛生上良くない。
一発必中、手に入れたのがパイオニアのS933というスピーカーの30センチウーハーである。
これに目を付けた理由は、マグネットが大きいこと、これに尽きる。
目分量では、オンキョーの倍近いマグネットである。
「45リットルの箱に30センチウーハーが入るのか?」と言う問題はとりあえず無視する。

そして何度目かのバッフル制作が始まった。
今度こそ失敗しない様に、床材のパーチクルボードの裏面に入念に補強を入れる。
出来上がったバッフルを本体に取り付けボルトで締め上げる。
そしてお決まりの通り、バッフルを破壊した。
もうこの辺は吉本新喜劇の世界である。(誰かがギャグを言うとお決まりで全員がこける、、みたいな、、)(関西人しか通じんと思うけど、、)
そして、何度目かのバッフルの作り直しである。
最終的に、15ミリ合板を二枚張り合わせた。
30ミリである。

さて出て来た音は、、、、低域が出ん。
慌てて原因を探しまくり、やっとのことでウーハーのインピーダンスが低いことに気が付いた。(最初から計っておけ〜)
コイルを値の小さいものに付け替える。
さて、、、、
今度こそ満足のいくものだった。
まずまずの及第点である。
さらに強力なウーハーも考えられなくもないが、プロ用は総じてエフゼロが高いし、さてこれに変わるものと言っても、なかなかないだろう。
あと、使っていて気付いたのだが、ツイーターをちょうど良いところまで後に下げようと思うと、やや後がはみ出す。
この「やや」が、私の美的感覚が許さない。
仕方がないのでツイーターの箱も作り直す。
さらに、中域の吸音材も徹底的に最調整する。
真綿を入れると音がやさしくなるが、入れ過ぎると死んでしまう。
最終的には好みである。
完璧ということはありえない。

出て来た音は、友人に言わせると「メインスピーカーいらん」
まあ、中高域は確かにそうとも言えるが、低域はメインスピーカーが風のように軽々出てくるのに対し、こちらのほうは比べると僅かに重い。
ただし、一般的には充分スピード感のある低域である。
もうこの辺はないものねだりの世界で、小さな箱に口径の大きいスピーカーを入れて軽い低域を出すのは難しい。
口径が小さくなると、周波数を犠牲にするか、能率を犠牲にすることになる。
これ以上箱を大きくすると、ミドルスピーカーではなくなる。


このスピーカーはほば一年がかり、中域の箱を二回、高域の箱を二回、バッフルを、、、、何回だっけ、、、思い出せん。
苦労した甲斐があったというか、いあや、楽しかった。
試行錯誤というより、行き当たりばったりに近い。
ウーハーも、たまたま探していた時に、オークションに出ていたというだけだし、、、
それにしても、、、その割には良い音である。
スピーカー作りには理論も重要だが、勘と経験も捨てたもんじゃない。