大型マルチバスレフ

マルチバスレフも数作作って、ほぼそのメリットもデメリットも理解出来た。
一番良いところはもちろん低域の再生限界が伸びるところであるが、私のマルチバスレフはショートホーンつきのため、あまり低域の遅れやレベルの低下を感じない。
マルチバスレフの動作はおおむねS氏の計算式通りの働きをするが、ショートホーンのないものは私の耳には低域の押し出しが少なく感じられるし、クラシックには良いものの、ジャズには物足りない。
また、ダクトの共振周波数は、まだこれからも試行錯誤だろうと思うが、あまり欲張りすぎて低域が低下しながらだらだら出るのも頂けない。
やはりマルチバスレフと言えど万能ではない。
ただ、他の共振を利用したシステム(共鳴管やバックロード)などより癖が少なく感じられるし、ある意味バスレフよりも自然だ。


そこで今回はメインシステムで使える位の大型のマルチバスレフに挑戦してみた。
まずユニットであるが、これがなかなか難しい。
中域がそこそこ良質のユニット、たとえばフォステクスのFEシリーズなどではハイ上がりになるし、あまり中域の良くないウ−ハー型のフルレンジでは、フルレンジのメリットを生かせない。
色々考えたが、今回は純粋なウーハーを使ってみた。
これは過去にも何度か書いているが、フルレンジ(中域スルー)が良いかマルチウエイが良いかは一長一短である。
マルチウエイもクロスが18db/oct以上になるとこれはもうメーカーの範疇だが、6db/oct位だと自作でもうまく合えば何とかなる。
実は今回は過去に何度も使ったことのあるスキャンスピークのウーハーを引っ張り出して来た。
18W8545である。
このウーハーは高域が1500Hz位までピストンモーションをする。
これは高橋和正さん(オーディオ評論家、スピーカーの位相を合わせたユニウエーブスピーカーの提唱者)の実験でも明らかである。
このウーハーをうまく6db/octでクロスさせる。
コイルは1.5mHである。
これに繋げるツイーターは広帯域のものでフォステクスの48Dである。
こちらもコンデンサー一発、10マイクロである。
と偉そうに言っているが、何のことは無い、高橋和正さんのユニウエーブスピーカーのネットワークをそのままパクらせて頂いた。
(もとい、参考にさせて頂いた。)
ツイーターは固定抵抗で8db位落としている。
これらのネットワークの素子は、昔ユニウエーブを自作していた頃に使っていたもので、コンデンサーはオーディオCAP、コイルは銅箔タイプ、固定抵抗はデールの10ワットだ。
今買えば、このコイルだけでも片チャンネル1万円近くしそうである。
あのころはバブリーだったとつくづく思う。
とても今のおこづかいオーディオの身分では買えたものではない。


さてエンクロージャーであるが、今回もフィフスバスレフである。
タイプは前回の10センチのものとほぼ同じ、ただ箱が二周り以上大きくなっている。
主空気室は18リットル、副空気質はそれぞれ約8.3リットルが4室である。
この辺も何作か作ってきたノウハウであるが、副空気質はそれほど大きくなくてもいけるようだ。
高さ75センチ、奥行き33センチ、幅40センチである。
ウーハーのエンクロージャーは、下部にショートホーンが付いているので見掛けはバックロードホーンのようである。
ダクトはVP50の塩ビパイプを使う。
共振周波数は、中のダクトが97ヘルツ、77ヘルツ、62ヘルツ、47ヘルツ、外部側のダクトが86ヘルツ、68ヘルツ、54ヘルツ、38ヘルツである。
今回も共振周波数は中のダクトと外のダクトを交互に取っているが、これもあくまで聴感上の結果である。
いかに計算式が出ていようと、この辺のところはやってみないと解らない。
この上にツイーターの専用エンクロージャーが乗る。
こちらは重量を増加するために、中に園芸用の小石が詰めてある。


さて音である。
まず感じるのは非常に端整なことだ。
特に中域から上が細かくて整っていて余計な音を出さない。
これは私の技量ではなく、もうユニウエーブからパクったユニット選定やネットワークの良さと言わざるを得ない。
そこら辺の100万円くらいのヨーロッパ製のスピーカーが裸足で逃げ出してしまう。
低域は、これも予想通り、と言うより予想以上の出来栄えだ。
40ヘルツまでは中域と同じレベルで再生している。
もともとダクトの音なのでハイスピードではないものの重苦しさは全く無い。
必要以上の低域のスピード感を求めないなら大成功である。


ということで、このスピーカーは昨年の秋より一冬部屋にあったが、もう少ししたら春が来る。
暖かくなるとまた新作が作りたくなる。
場所を確保するためそろそろユニットとネットワークを外して大型ゴミ行きかなと思っていたら、たまたま私の友人の友人が遊びに来てくれて、音が大変気に入ったと言う。
申し訳ないが渡りに船とばかりに持って帰って頂いた。
まあ、私はいつも音がある程度で無いと他人にお渡ししたくないが、充分使って頂ける範囲内だと思う。
この方は友人の友人なので、うまく鳴れば、寄せて頂きたいものである。