ステレオ誌応募スピーカー2012                             

今年もステレオ誌の付属スピーカーによるコンテストの時期である。
学生の人には夏休みの工作でちょうど良いかもしれないが、7月19日発売で9月初めの応募だから、本当に夏の真っ盛りにスピーカーを作ることになる。
年寄りにはかなり堪えるのだ。

さてユニットが来て、どのようなスピーカーを作るかいつも迷うのだが、長年のスピーカービルダーの習性からか、小口径一発となるとどうやって低域を出そうかと考えてしまう。
もしかすると、もうこの辺に発想の限界がるのかもしれない。
もっと気楽に、ロフトでおしゃれな容器を見つけてきて、ユニットを取り付けるとかした方が良いのかもしれない。

と言いながら、今年もオーソドックスに攻めてみた。


以下、応募した原文のまま載せる。




ステレオ誌応募スピーカー「マンハッタン」

ステレオ誌の付属スピーカーが今年は10センチだった。

しかもメーカーはスキャンスピークらしい。

スキャンスピークは自作マニアなら知る人ぞ知る高級ユニットメーカーである。

これは楽しみだ。

さてユニットが手元に来てみると、思った以上に高級感がある。

Fゼロは100Hzで、口径にしては少し高めか?

マグネットはまあまあ、少し低域を出すのが難しそうである。

こういった小口径ユニットで低域を出すのはマルチバスレフが最適である。

バスレフではFレンジが期待出来ないし、ロードを掛けるのも難しそうだ。

マルチバスレフは共振点をいくつも持つバスレフで、動作は基本バスレフなのでユニットの駆動力はそれほど必要

ではない。

どちらかというと空気室の容積で低域を出している。

故長岡鉄男さんの定番のダブルバスレフは、内部ダクトと外部ダクトで共振点を2つ持つ。

私のマルチバスレフは、これをさらに発展させたもので、主空気室に対して並列に複数の副空気室を持つ。

私は最高シクスティバスレフ(主空気室1つ、副空気室5つ、共振点10ケ)まで作ったが大成功だった。



今回は10センチ口径なので、主空気室1つに対して副空気室3つを持つフォースバスレフとした。

内容積は4リットルから使えるそうだが、少し窮屈そうである。

そこで、10センチユニットとしてはちょっと大き目の7リットルを目途とする。

それでも空気室が4つあるので30リットル近くになる。

外観は、せっかく応募するのに真四角なスピーカーでは面白くないので、色々考えたが、底板の幅20センチ、天板の幅

30センチという上方に向かって広がっていく独特の形とした。

このままでは安定性に不安があるので、別途30センチ四方のべースを取り付けた。

高さは、板取りの関係で60センチとする。



結局、主空気室8.7リットル、副空気室が6.7リットル1つと7.5リットル2つになった。

ダクトは6本あるが、外部に繋がるダクトの共振を125Hz・90Hz・70Hz、内部ダクトの共振を60Hz・50Hz・45Hz

とした。

少し低域のレンジを欲張りすぎの感じではある。

エンクロージャーの上方2分の1奥行き2分の1の部分を主空気室とし、副空気室はL字型で縦に3分割、内部ダクトは

主空気室から下方へ3本、それぞれの副空気室に繋がる。

外部ダクトは天板に付けた。

それぞれの空気室から天板にダクトが3本付いている。






合板は、強度を考えてコンパネを利用した。

通常のラワン合板や針葉樹合板に比べてかなり硬い。

板厚は12ミリである。

複雑な角度の組み立てであり、かなり苦労したが、手カンナや電動カンナ、サンダーやジグソー、パテを総動員して

何とか仕上げた。

仕上げは、本体は白色塗装、ベースはパイン集成材で透明ニス、バッフルは高級ネクタイ用の生地の布張りである。

自分としては、素人の日曜大工としては、かなりうまくいったと思っている。




ダクトは上面である。



裏板は、吸音材の調整も考えて外れるようになっている。



吸音材は、出切るだけ少なく、主空気室の上面と、副空気室の下面に脱脂綿を貼っている。

また、主空気室には吸音材を出切るだけ少なくするように、ユニットの磁石の支え兼リフレクター(拡散機、45度に

取り付けた木のブロック)が入っている。



さて出て来た音であるが、ボーカルは色気もあり充分であるが、まがいなりにもオーケストラが聴ける。

ぶつかってくるようなジャズ向きの低域ではないが、Fレンジは充分である。

中高域はユニットが良いのか綺麗な音だ。

こちらも、エネルギー感より、暴れの少なさを感じさせる。

トータルとして大成功だった。


なお、ペットネームは、超高層ビルの様な外観と全体の都会的なおしゃれな仕上げから、「マンハッタン」とした。







以上の通り応募した。

コンテストの審査についてどうのこうのと言うことはないが、機会があればより多くに人に聴いて頂きたいと

思っている。

マルチバスレフは、目から鱗のなかなか良い方式である。

なお、ペットネームでさんざん悩んだが、自虐ネタで「予選落ちpart3」とするのだけは止めておいた。