スーパーウーファー

ホーンスピーカーを使って頂いている女医さんから電話があった。
このホーンスピーカーはテクニクスの30センチウーファーにフォステクスの1インチドライバー、フィリップスのリボンツイーターという構成である。
「使わして頂いているスピーカーなのですが、オーケストラはうまく鳴るのですが、パイプオルガンの重低音が出ないんです、、」
「はあ、そうですか、、、、、」
「何とかなりませんか、、、」
「頑張ります」
といっても30センチウーファーである。
20Hzや30Hzを出せといっても、無理がある。
30センチウーファーにホーンドライバーなので能率は高い。
アクティブは使いたくない、、、、、さてどうするか???


どうしても良いアイデェアが浮かばなかったが、そこでふと思い出した。
この女医さんを紹介してくれた友人も自作のスーパーウーファーを使っているが、これがなかなか音が良い。
70リットル弱くらいのASWだが、ユニットにFE206Sを使い、それを前面を向かい合わせで取り付け、駆動力を倍にしている。
もともとマグネットの強いユニットをダブルで使っているから、音が楽々と出てくる。
接続は、それぞれのユニットに左右の入力を逆相で入れているので、左右一体である。
そこで電話して色々と聞いてみると、ダクトの共振は30Hzにしていること、ユニットには18mHのコイルを入れていることが判った。
ただし問題は能率である。
友人のメインスピーカーは20センチウーファーで能率が90db弱である。
とてもではないが30センチホーンスピーカーには使えない。
色々考え、友人にもアドバイスを貰いながら、結局ユニットはフォステクスのFW305でいくことにした。
割とマグネットが強めの30センチウーファーである。
ただし、このユニットはウレタンエッジであり、大振幅で使い続けると経年変化が心配だ。
そこで、懇意にしているエッジ屋さんに布エッジに張り替えてもらった。
「通常より少し柔らかめでお願いします。」
こんな無理な注文にも気楽に応じてくれて、いつもたいへん助かっている。


設計してみると、上部エンクロージャー60リットル、下部エンクロージャー90リットル、合わせて150リットルもある。
通常の部屋にはバカでかいが、幸いにも女医さんのところは完全防音の地下室で二十数畳ある。
合板は18ミリを使ったが、手持ちの板材でこれでもかと言うほど補強を入れた。
友人のアドバイスでダクトの共振は30Hz、たまたま手持ちのあった18mHのコイルも入れている。
吸音材は上部エンクロージャーのみ、下部エンクロージャーには何も入っていない。


制作はただの四角い箱なので、重いことを除けばそれほど難しくはない。
左右一体型なので、通常の半分の労力である。





さて、完成してとりあえず特性を取ってみる。
何と、30ヘルツより20ヘルツの方がレベルが高い。
50ヘルツからはだらだらと落ちているが、100〜200Hzの間と200〜300Hzの間に櫛状にピークがある。
これは原因がはっきりしていて、下部エンクロージャーに吸音材を入れていないためである。
ただし、ダクトが地面すれすれのせいか、このピークは聴感上は全く気にならない。


そこそこの特性だったので、友人を呼んで試聴する。
ただし、私のメインスピーカーはプロ用の38センチである。
重低音の入っているソースをかけると部屋の空気が飽和するかと思うくらいだが、オーケストラではそれほどメリットがない。
少し能率が低い気もするが、これで良いのかどうだか、、、、、良く判らない。





友人と相談して女医さんに連絡を取り、スーパーウーファーを納品する。
納品はヤマトの引っ越し便で行った。
もうこの大きさだと、私と友人では地下室までの階段を考えれば、多分無理だろう。
引っ越し便は部屋まで運んでくれる。


とりあえず接続し、少しでも能率を上げようと正面の右隅に、壁から少しだけ距離を置いてダクトを壁に向けてセッティングする。
重低音の入ったCDを掛けてみる。
音が出た瞬間、低域で気分が悪くなるほど出ている。
これでは出すぎだというので、ダクトを正面に向けるとちょうど良くなった。
それにしても、こんな低域はよそではちょっと聴けない。
ぶっ飛んでくるような音である。
うちは38センチ、女医さんのところは30センチなのでかなり能率が低い。
それも良かったのだろう。


あまりの嬉しさに、3人で祝杯を挙げ、ビールの飲み、ワインを飲み、おまけに日本酒も飲んだので、帰りはかなり辛かった。